ポスト遅れました。楽天 10 周年イベントの一環として行われたようです@楽天タワー(初潜入)。品川シーサイドの駅から屋根続きでアクセスできる、とてもキレイなビルヂングでした。楽天って「楽天さん」って書くべきかな。なんか敬称略の方が馴染みがあるというか書きやすいので、敬称略で書きます (_ _)
イベントは、基調講演 + 2-3 トラック並行開催でのセッション + 楽天食堂(っていうのかどうかは知らないけど、社員食堂)での懇親会 という内容でした。参加のモチベーション(こういうの、これからちゃんと書こうかな)は、
- テクノロジーの会社という認知が少ないのでは?と思われる楽天が、テクノロジーカンファレンスというお題目で、どういう企画/演出/運営をするんだろう
- 三木谷さんとまつもとさんが何を話す(どういう会話を交わす)んだろう
- いろんな人に会いたい!
- google の 100 倍ウマいという社員食堂でご飯を食うぞ
こんな感じ。
セッション内容の方は、楽天のビジョン、サービス、あるいは現場の人の意気込みやマインドセットみたいな内容が多かったように思う。僕が聴いた中で、テクノロジーな色を感じたのは、武田さん(カーネギーメロン大学)のセキュリティの話と、跡部さん(楽天)のネットワークシステム構成の話(の後半)。あ、あと、まつもとさんの Roma と Fairy の話は面白かったというか、興味深かった。もうちょっと技術に突っ込んだ話が聴きたかったけど、取引先の方や内定者の方も招待されてたみたいだから、バランス(落としどころ?)としてはこんなところなのかもしれない。雰囲気はわかったし(雰囲気しかわからなかった、というのもある)。
いっぽう、各セッションの時間が短くて、プレゼン内容は詰め込み気味、講演者の方も早口になってしまっていたのが気になった。本数を減らすとか、トラックを増やすとかして、もうちょっとゆっくり聴ければ、技術に突っ込んだところも話しやすかったんじゃないかな、と思う。
運営の方は、初めての開催とのことで、多くのスタッフを配置されてたように見えた。手持ちぶさたな人もいらっしゃったみたいだけど、少ないよりは良いと思う。なんとなく、安心感あったし。ただ、目の前のことに一生懸命になられてたのかな、セッションが終わるときに講演者が「ちょっと時間があるので質問を受けます」って言ってるのに締めの挨拶を始めてしまったり、会場の入場整理してる人にトイレの場所を聞いたら全然反対方向を教えられたり、最後の懇親会場の移動でエレベータが混雑してるときに展示会場をとっとと撤収してしまったり(多少の時間でも誘導できたのでは)とか、杓子定規っぽい点が見えるのが、多少気になった。
三木谷さんとまつもとさん、ギャレット社長(adobe) の話は、パネルディスカッションモデレータの森さんがうまくコーディネイトされてた感じで、意見の深い絡みまで聴けなかったのが残念。皆さんの話、とっても面白かったです。他の方が話してる間、うなずいてたり、首をかしげてたりするところが皆さんにあったようなので、そこにもっと突っ込んでほしかった。でも、コーディネイトがうまかったなあ。あの時間制約のなかで、同じ方向に話をまとめていかれたのは凄いとおもう。
懇親会、楽しかったです。参加人数が多く、身動きがとれないくらいの状態でしたけど、何人かの方に初めましてできたし、森さんにサードリアリティ語ってもらえたし 。あと、ご飯もおいしかった。Google のを食べてないので 100 倍うまいかどうかはわからないけど、サーモンのやつがおいしかった。かりんとうの試食もおいしかったので、おみやげに2つ買って帰りました。
以下、メモを転記。例によって散文ですが。
基調講演: 末次社長@サンマイクロシステムズ
- サンのエコ(環境問題)への取り組み
- 昔から The Network is the Computer って言ってる
- 世界で11億台のケータイ端末が販売されている(年間だったかな)
- 世界で15億人のネットユーザがいる。でも、これでも 25% くらい
- ネットユーザの拡大に伴い、ネットワーク帯域幅の需要と重要性が指数関数的に伸びている
- 秒間 390GB のデータが生成されている。そのうちの約半分は貯めておく必要のあるデータ
- サーバコストよりも電力コストが大きくなってきている
- サンのとあるデータセンタは、エコな機器に置き換えて、エネルギーコストを 60% 減したらしい
- ほとんどのデータセンタは、床面積、電力、空調のいずれかにおいて問題を抱えている
- Solaris は SPARC なものだと思われているが、SPARC で動いている Solaris は全体の 10% 以下
- なぜサンにはエンジニアが集まっているのか? .. 開発投資をやめないから、とみている。赤字でも 20 億ドル/年の開発投資を続けている
基調講演: まつもとさん
- 成田に同姓同名のギタリストがいるらしい
- 楽天と一緒にやることになった理由: 相性のよさ、補完関係、タイミング
- おもな研究内容: スケーラブルストレージ(Roma: シーク/バス転送/メモリストレージ/信頼性/汎用性/管理コスト)(Google のひとが「ディスクのシークだけは(技術が)進歩してない」とか言ってたのを思い出した) と、マルチタスクハンドリング(Fairy: タスクモデルの提示/タスク結合)
基調講演: 森さん@楽天技術研究所
- バリューチェーンを再設計して、個々の事業内容を明文化
- 研究ビジョンの設定: サードリアリティの話。「リアリティ」という言葉を再定義、あるいは定義を進化させようとするもの、に見える
- リアリティの構成プロセス: 断片化/再構成 -> コンテキストの共有 -> 協力しあう関係(ここ、よくわかんなかった) -> リアリティ
楽天新サービス
Webセキュリティの話: 武田さん@カーネギーメロン大学
- Webアプリ脆弱性の分類: インジェクション系、セッション管理系、パラメタ操作系
- 楽天の安心クッキー(ネタ)
- 楽天の安心サンドボックス(ネタ)
- 楽天のフィッシングサイト(ネタ)
- DNS Rebinding の話
- OpenID の話
オープンソースとイノベーションの話: 藤本さん@GREE
- オープンであることがイノベーションを生む(と考えられる)理由
- cheap revolution
- 集合知 .. 思いもよらない意見、発想
- オープンソース開発に参加することの楽しさ、面白さ
楽天でのRubyプロジェクトの話: 講演者お名前失念(申し訳ない..)
- 楽天での技術採用に対する考え方: 技術そのものより、良く知り、支える技術者がいるかどうか
- 2006年から社内勉強会などを通して、Ruby の実サービス利用を進めてきた
- 社内サービス、社外サービスにいくつか実績ができた(後述)。apache + fastcgi 構成。DB 数十万アクセス/day のサービスを linux サーバ 3 台で回している(DB除く、かな..?)。開発してみての手応えはまずまず
- 社外向け「今日は何の日」: 40万PV/日
- 社外向け アンケートシステム 開発中
- 社内向け キャンペーン管理ツール
- 社内用プラグインもいろいろつくっていってる
楽天のネットワークシステムの話: 跡部さん@楽天
- 楽天のネットワークシステムのコンセプト: 儲かる、儲けさせる、止まらないネットワーク
- 9Gbps トラフィック。NW 機器 1000台規模。稼働率 99.95% 目標
- AS 番号取得済み。BGP4 で接続。DC 間はダークファイバ利用。WDM を入れた
- ダークファイバにしてから、遅延が少なくなった。ホップ数が減ったからかも
- DC 内スイッチ構成。STP + 多少チューニングを入れている。これで遅延がかなり減った
- トラフィックの多くが画像や動画などのマルチメディアデータ。画像キャッシュサーバを導入して軽減。reverse proxy させてる
- LVS 100台規模(失言ぽかったので、具体数は伏せときますw)
- ASIC 系のスイッチは L2-4 で、ホスト系は L7 で運用。ホスト系は L7 処理に向いているが、CPU 負荷が厳しいのでなんとも
楽天のデータセンタの話: 石井さん@楽天
- 約 150 万アクセス/日、約 700 アクセス/分
- 約 900 万検索/日、検索スループット 0.82 sec
- 4000 万会員
- 6000 台機器、1200ラック
- DC 運用設計専任組織。7人社員 + 33-4 名の委託社員。DC フロア設計やラック運用設計とかやってる
- サーバルーム 680 平米ほど
- サービスが止まってないかの監視として、24 時間、毎分、実際に買いものをしている(凄いw)
パネルディスカッション: 三木谷さん、まつもとさん、ギャレット社長、森さん
誰がしゃべったことか、いまいち整理できてないかも。間違ってたらすみません。
- 三木谷さん
- 楽天の柱: strategy, technology, operation .. operation をちゃんと押さえているところは他にはあまりない
- 各サービスで経済圏を構成しつつ、ユーザのビヘイビアを見ながらパーソナル化を進めていきたい
- モバイルの売り上げは順調に伸びている。100億円/月に迫っている
- 楽天のショッピングはエンタテインメントだとおもっている。普通の人がエンタテインメントをつくることができる環境をつくっていく
- やりがい: 感謝されること .. 感謝されるための接点を増やすことが大事
- 強い志と執念
- まつもとさん
- エンジニアは technology から strategy に影響を与えることができる存在
- CPUパワー、ストレージ、ネットワーク帯域の進化は、量の変化であり、質の変化では無い
- 量の変化により、質の変化が起こる場合もある .. 安くなる、無料になるなど .. 下がりつつあるコストはいつかゼロになる
- 変わらないもの: 基礎体力、想像力 を身につけよう .. これが strategy に影響を与えられる
- とにかく生産性を上げる。上げないと、オフショアに負けるし、さくさく作れないと楽しくない
- 心理的な障壁は簡単に越えられる
- ギャレット社長
- ユーザは UI ではなく、体験を求めている
- デザイナ(の仕事)とデベロッパ(の仕事)の融合、オーバラップ
- 新しい付加価値は、常に世界規模の競争にさらされるようになる。役割の融合も進むため、競争相手も増える
- 何かをつくること、がやりがいではなく、(何かをつくることで)何かができるようになること、がやりがいになる
- 競争相手として外を見る必要は無い。どこまで行けるか、を気にした方がいい
- エンゲージメント性、エンタテインメント性、想像力
と、ここまで書いたら、森さんからサードリアリティな資料をメールいただいたので、御礼も兼ねて、もうちょっと考察してみます。
「リアリティ」という言葉の意味するところは、どうも抽象度が高いし、これについて真剣に考えることは、ややもすると胡散臭い議論になってしまいそうだ。そもそも「現実」という言葉を説明するのは非常に難しいようにおもえる。
ちょっと考えてみたが、リアリティ .. 現実味とでもいうのかな、というのは、合意のプロセスの積み上げで構成される部分があるのではないか、とおもう。
現実というのはそれを認識しようとしたときに、自分の中や他者との間で「合意」のプロセスを経るもののようにおもう。そうやって、自分の中に形作っている現実を固めたり、あるいは補完しようとするのではないかと。
と、ここまで考えると(ここまでが合っているかどうかを置いておいて)、ふたつ疑問が出てきた。
ひとつは、なぜ、ヒトは現実を構成しようと考えるのか、
ふたつめは、そもそも「合意」とはどういうプロセスで得られるのか、
時間の都合上、これ以上文章を固めたり続きを書いたりしようとすると、いつまでもポストできないので、一旦ここまででポストしてしまうことにします。ちょっと弱いな、けど、まあいいや。
さて、イベントを終えて、全体的には満足満足、です。いろんなことを知れたし、いろんな人に会えたし、ご飯もおいしかったし、おみやげまでいただいてしまった。これだけのイベントを無償でやっていただいて、楽天さんには感謝感謝、です。10 周年記念にとどまらず、またやっていただけると嬉しいです。
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